【マニアネタ】顕微鏡のケーラー照明について

 最近、会社の仕事で、若手に光学顕微鏡について教えるという教育資料を作成した。3回に分けて、1回目は構造と光学原理、2回目は分解能とNAの話をして、3回目に照明に関する話をしたのだが、どちらかというと1, 2回目は3回目のための前置き、という位置付けになっている。それくらい、顕微鏡で使われる「ケーラー照明」というものは重要というか、光学的な英知が込められており、これを理解できれば、その他の顕微鏡の光学系に関する理解が大きく進む、と言っても過言ではない。

 

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ケーラー照明のまとめ図

 その資料を作成するにあたって、色々なネット上のページや画像を参照させてもらって、非常に参考になったのだが、どの説明にも今一つ掴みにくい点が含まれている、と感じた。と言っても別に、参考にさせていただいた情報が間違っている訳ではない。ただ、あまりにも情報を詰め込み過ぎだったり、逆に説明なく省略されていたりで、自分の脳みそに落とし込むのに時間がかかったという事であり、自分の頭の悪さを露呈しているともいえる。

 そんな訳も有って、自分なりに納得できるような順を追って資料と図を作成したのだが、ひょっとしたら私と同じように悩んでいる人の参考になるかもしれない、という気分になってきた。特に秘密情報というようなものでもないので、このブログに公開しておけば、Google検索か何かで引っ掛ける人が出てくるかもしれない。ただ、興味のない人には本当に何の関連も無い話なので、そういう人はこれ以上読む必要は全く無いので、悪しからず。

  そもそも、「ケーラー照明」とは、主に顕微鏡で電球等の光を試料に理想的な状態で照射する手法であり、100年以上前に開発されたものが今でも使われている、大変優れた技術である。特徴を簡単にまとめると、以下のようになる。

  1. 照明と試料の間に、2枚のレンズ(コレクタ、コンデンサ)と、2枚の絞り(開口絞り、視野絞り)を置くことで構成される。
  2. コンデンサレンズの焦点は、コレクタレンズを通して照明が結像される点に一致するよう配置される。そして、この点に開口絞りが置かれる
  3. コレクタレンズの焦点は、コンデンサレンズを通して試料が結像される点に一致するように配置される。そして、この点に視野絞りが置かれる

以上のような条件により、試料のある領域の内側は均質な明るさとなり、しかも光軸に対して平行から広い角度範囲内に進む光によって照射される(つまり、高NAに対応可能となる)。開口絞りを絞ると、照射領域サイズと均質性に影響することなく、照射角度範囲を狭くできる(但し、視野の明るさは均一に暗くなる)。一方、視野絞りを絞ると、照射角と領域内の均質性に影響することなく、照射領域を狭めることができる。このように、顕微鏡の証明に必要な要件を満たした上で、照射角によるNAの制御と、照射領域による迷光のカットを独立して実現できる点が特徴となっている。

 以上の要件をまとめて、説明に必要となる光路を書き加えたのが冒頭の図になる。ただ、このままだと情報量が多過ぎて、ゴチャゴチャし過ぎて何が何だか分からない。そこで、この図を分解して、順を追って示す必要が有るのだが、それは結構長くなるので、今回はここまで。次回と次々回でもう少し分解して、順を追って示すので、興味のある人はそちらを見ていただけるとありがたい。